12年半勤めた金融系SIerを退職しました

退職

あけましておめでとうございます。2018年9月30日を持ちまして、大学新卒入社以来12年半勤務した金融系SIerを退職し、2018年10月1日より事業会社のエンジニアとして働き始めました。年内で試用期間を終了することから、ちょうどよい節目として転職にまつわる思い等をまとめておこうと思います。

前職の概要

企業分類としては、大手企業の子会社としてシステムインテグレーションを担う会社。俗に○ー子と呼ばれる会社でした。○に何が入るかはご想像におまかせします。

金融系というのは主とするビジネス領域が金融関係であったという意味で用いています。資本が金融系という意味ではございません。

親会社からの開発案件を請負で処理するか、SES契約で人を出すか、概ね業務形態としてはそのいずれかであったと思います。

現職の概要

主に食品を取り扱う事業会社で、ECを主軸として売上を立てている会社です。自社事業に関するシステムは概ね内製(いわゆる外注のエンジニアも入っていますが)しており、相応の数のエンジニアを雇用しています。

外から見るとポジティブな社風がちょっと気持ち悪い会社かもしれません(笑)

転職理由

転職を決意した理由はシンプルなものでした。転職するために活動したというよりは、マッチした求人をみかけたので応募してみた、というのが理由です。具体的には、

  • スキル・キャリアのマッチングに問題がない
  • 収入面も問題ない(同等)
  • 通勤距離が短い(徒歩で行ける)
  • 勤務形態の自由度が高い
    • リモートワーク可
    • 服装自由
    • 裁量労働

と言ったところでしょうか。細かくはもう少しあるのですが、自分とのマッチング度合いはかなり高いものと感じました。強く転職を希望していたというよりは、条件に合う求人を見つけたので応募してみたところ、実際に入社できた、というところです。

前職に対する潜在的な不満はなんやかんやなかったわけではないので後述しますが、転職理由として挙げるならばこのような形になります。

直接応募で選考を受けたのは1社のみになります。転職活動としては何日か有給休暇を使って休みを取って面接に行った、程度のものでしょうか。

退職エントリとして転職するために何をやったか、といったノウハウのようなものは特にこの記事では書けないので書けません。書類や面接のテクニックは正直どうでも良いと思うのでマッチしている会社を探すことが一番、ということは実感しています。

変わったこと・変わっていないこと

同じエンジニアとは言え異なる業界への転職でしたので、細かい点も含めて変わったな、と思う点も多々あります。ひとまず諸々のポイントで変わった点・変わっていない点を見てみます。

給与

年収は同等ですが月給+ボーナスの制度から年俸制に変わりました。また、裁量労働制になりましたので残業代がつかなくなりました。労働時間が取り立てて長いわけでも無いので、マイナスになったとは感じていません。適正な運用がされていると感じています。

また、前職では徴収されていた労働組合費(現職は組合なし)や詳しくは書けませんが謎の天引きがなくなったので、僅かですが手取りとしては増加しています。

また、前職では業績評価に応じてボーナスの額がそれなりに変動する仕組みでしたので、それが無くなって収入の予測が厳密に立てられる様になったのは個人的にはかなりプラスです。

現職での評価はまだ一度も受けていませんが、それなりにパフォーマンスを出していれば評価はしてくれる文化のようです。

勤務形態

スーツを着て革靴を履く、ということが無くなりました。クリーニング台も馬鹿にならなかったので実質収入増ですね。毎日ユニクロのパーカーで仕事しています。靴もユニクロのニットライトスニーカーを買いだめして履いていますが、おかげで随分かかとが柔らかくなってきました。

定時の概念はありますが裁量労働なのでちょっと遅めに来る人が多いですね。私は家が近い事もあって時間どおりに来ていますが、たまに早めに帰ったりもしています。

集中したいときは音楽を聞きながら仕事をしても特に咎められることは無いようです。私は外で音楽を聞く習慣がなくて道具を持っていないので試したことは無いですが。

作業用PC

入社前に軽い気持ちで希望を出していた13インチのMac Book Pro(2018年モデル)にCPUとメモリを積み増したモデルを支給されました。キーボードとトラックパッドも純正のを買ってもらえました。

前職では閉鎖されたLANで開発する用の32bitのどうしようもないWindowsマシンと、インターネットに接続できる事務用の32bitのどうしようもない仮想デスクトップで仕事をしていましたので環境は良くなりましたね。

また、前職では無線LANは使わせてもらえませんでしたがデフォルトでwifi接続の環境で作業しています。

コミュニケーション

メールベースのコミュニケーションからSlack中心のコミュニケーションに変わりました。出先からでも接続できますし、スマートフォンでも使えますので出先でもコミュニケーションはカンタンに取れますね。絵文字でのリアクションも盛んな文化です。

また、名刺交換の機会が増えました。クラウドベンダを始めとするサービス・プロバイダと話す機会や、(発注元・先の関係でない)社外の人とのコミュニケーションを取る機会も増えましたのでね。今にして思えばSIerの下っ端が名刺交換する機会なんてあんまりなかったですな。ゼロではないですが少なかった気がします。

タスク管理

これは・・・前職で最期に居た現場が際立って古臭い現場(SIerのダメな側面を最大限に発揮していた素敵な現場)でしたので、転職したから変わった、というものでは無いかもしれません。

Excelベースの謎のスケジュール表がBacklogのチケットベースに変わりました。流石に今どきどこへ行ったって何がしかのチケットシステムは使っていると思うので。。。たまたまということで。

あとはウォーターフォールの概念はなくなりましたね。チケットベースでアジャイル的に開発して毎日リリース。まぁ事業会社の自社開発なら至極当然ですね。

また、現職はマネジメント面やアーキテクト的なガバナンスを見るとまだまだ発展途上な感じがしています。これは良い面も悪い面もあると思います。手堅く予定調和でやりきることをどの程度重視するかってところですかね。見ていてハラハラする部分もありますが今の所楽しめています。ヤバそうなときは自分でフォローすればいいですしね。

Techカンファレンスへの参加

前職ではあんまり興味を持てなくて参加してなかったのですが、カンファレンス・イベント系に参加することは多くなりましたね。試用期間の間ですがそれなりに参加させてもらいました。

単純に参加して勉強になるということもそうですが、社内には登壇する人なんかもいて、そういった活動はきちんと評価されます。前職でそういったことをやっている人が居ないわけではなかったですが、なんか微妙な扱い(言葉で説明するのは難しいのですが)だった気がします。

そもそもカンファレンスで語られるような技術や事例が業務にダイレクトに役立つことが少ないというのが現実だったと思います。SIerあるあるですかね。

エンジニアの技術レベル

体感に過ぎませんが、前職でこの人技術的に尖ってるなぁ〜と感じたくらいのレベルの人が割と普通にいる、という位の感覚でしょうか。ただ、実態として現職のエンジニアのレベルが非常に高いのかというとそういうことではなくて、前職のレベルが残念ながら低かった、ということだったと思います。もちろんすごい人も中にはいるのですけれど、今の自分の実力でもある程度は戦えている(役に立てている)感覚は持てています。

加えて、自分の最も得意な領域であるサーバサイドJavaと言われるような領域のレベルは正直なところあまり出来が良いとは言えない感じかもしれません。それゆえに求人を出していたのでしょうし、自分も役に立てているというところかもしれませんが。

もっとレベルの高いエンジニアがたくさんいる環境に身を置きたかったのかと言えばそんなことはありません。レベルの高いエンジニアに囲まれて刺激を受けて幸せ、なんてことを言う人も中にはいますが、自分の持っている武器である程度戦える戦場でないと正直生きてくの厳しいですしね。

常に最新技術に触れていきたい、という欲求よりは、こうすればうまく出来る、便利にできるというものが世の中にはたくさんあるのに、割とくだらない理由でそれが遮られることの方がエンジニアとしてはストレスですよね。後は意味がなさそうなのに今までそうやってきたからそうやるんだ、みたいなことがたくさんあるとか。

具体的には書きませんけれど。

そういうつまらないことでイライラする事は今の所ありませんし、少なくとも前職ではなかなか触れられないようなものを触れて、この現場でうまいこと使うにはどうすれば?みたいなところに頭を悩ませるのは嫌いではありません。

エンジニアではない人の存在

現職は事業会社でかつEC主体とはいえWebサービスを売りにしている企業ではないので、エンジニアでは無い職種の人が多く存在します。というか当たり前ですがエンジニアではない人のほうが多いです。前職はSIerでましてや子会社ともなると同じような職種の人ばっかりだったりしますもんね。

現職では物流センターなども自社で持っており、現場の業務体験研修なんかにも参加させてもらいました。とても新鮮に感じます。

生え抜きの人が居ない

前職では中途採用者の割合は比較的低く、離職率も低めだったので、新卒採用からずっと同じ会社に居ます、みたいな人が多かったですが、現職ではそんな人はほぼいません。ほとんどの人が中途採用で、どこかの企業で社会人経験を積んで入社してきています。

色んな考え方の人が居て面白い・・・のはまぁありきたりなので置いておくとして、エンジニア視点で見ると決定的に違う点が。

全員技術的に何か武器を持っています。

当たり前の話のようで当たり前では無い話。生え抜き率が高いことと直接的な因果関係が無いようにも見えますが、無くはないのではないかと思います。組織の事情で不運なキャリアしか積めなかった人とか、うっかりエンジニア向きじゃないのに入社しちゃったけどずっといる人とか。まぁ色々ありますよね。

転職してよかったのか

良かったです。とっても。

なぜ良かったのかはなぜ転職したのか、そして何が変わったのか、ということとイコールです。良さそうだと思って応募した。そして実際良かった、それだけです。

転職を経験できたということ自体も個人的には大きい。ずっと同じ会社で仕事をし続けてその会社の文化でしか仕事ができなくなる、というのも大きなリスクですからね。最低でも1回は転職を経験してこそ一人前、と言えなくもない気がします。

エンジニアという職業は比較的人材の流動性が高く、またそうあるべき職業だと思っています。特定のビジネスドメインでの仕事がものすごく自分にハマっている、という人であればまぁ良いですが、色んな会社の色んなシステムに触れる方が技術面での知見は広がって行きますし、人の出入りが全く無い組織というのも腐って行きますしね。

SIというビジネスモデルを考える

さて。転職してよかったです、めでたしめでたし、で終わっても面白く無いので前職で不満に感じていたSIというビジネスモデルってヤツを考えてみます。

12年半もSIというビジネスの中で仕事をしたわけですしね。もちろん業界の全てを理解したわけでは当然無いですが、それでも十分に経験を積んだと言って差し支えない年月を過ごしたのでは無いでしょうか。

ビジネスモデルの本質

SI業界の基本的なビジネスモデルは製造業に近いですよね。立ち上がったプロジェクトに対して下請けの製造会社に部品製造を発注するが如く人を発注し、とにかく人を集めてプロジェクトを推進します。

その過程で一次請け、二次請け、、、N次請けというピラミッド構造が生まれ、様々な問題を生むことになりますが・・・その問題については一旦置いておいて、法律上は適正な契約の下に要員が集められてプロジェクトが進められるものとしておきましょう。

この手法で人を集めるのは大手SIerに共通するプロジェクトの進め方であって、日本のSI業界で働くエンジニアの多くはこのピラミッドのどこかに身をおいて仕事をしていることが多いわけです。

この構造において私が最も忌避するのは、ピラミッドの各レイヤに存在するマネジメントにおける正義が「買い叩いてゴリ押す」であるということ。これはある意味で自然な話で、人を集めれば集めるほど売上が立ち、下請けから集めた要員の単価が低ければ低いほど利益が上がるのですから。

一生懸命会社の利益に貢献すること、これすなわち買い叩いてゴリ押すこと、になるわけです。そう聞くとひどい話だなぁと思えますが、中の人も仕事ですから一生懸命神経すり減らして単価交渉して書類書いて毎月契約手続きしてるんですよね。

辛くないですか?

いくら法律的にセーフだからって明らかに良からぬことを仕事だと言うことを言い訳にいい年した大人が雁首揃えて一生懸命やっているんですよ。しかも無自覚に。

前職で私が常にムカついていたのはおそらくコイツのせいですね。当人たちは一生懸命仕事をしているつもりなんでしょうけれど、私から見るとただの悪人にしか見えません。

私は加害者を見るのも被害者を見るのも、被害者が新たな加害者になるのを見るのも嫌いなんです。そりゃぁムカつきます。しかも加害行為に悪意は無かったりする・・・コレは本当はいい人なんだけど、と見るのではなくもう悪事を行っている意識すら無くなっている真正の極悪人です。

SIerをdisる文脈はやれ技術力がどうだとかPCのスペックが低いとかその手のワードが踊る事が多いですが、そんなことは些末な話だと思います。会社や現場や人による、程度の話。が、この業界構造だけは倫理的に非常に見てよろしくない。

ExcelとPowerPointとしか向き合わなくて技術力がつかないから悪いとかでは無いんですよ。ExcelとPowerPointで稼げるならガンガンやるべきです。そうではなくてExcelとPowerPointで暴力を振るうのが仕事だから悪いのです。

ピラミッドの中にに身を置く人はよ〜く思い出してください。

稀に人を人だと思ってない輩もいたでしょう?

で、そういう人が評価高かったりしてね。いや、評価が高いのは暴力的に立てたものとは言え数字が立っているからまだ納得出来るとしても、それで自分仕事できますみたいな顔されてもね。ヤ○ザのしのぎではないのですから。

大規模システムの構築能力

世の中には非常に大規模なシステムが存在し、社会インフラなどと呼ばれていたりするわけで、SIerはお得意の人海戦術でその手のシステムを作ってきたわけですが。

そういったハイレベルなマネジメント能力、そもそもそういうでかいものを作るときに何をすればいいのかと言った特殊なノウハウは称賛に値すると思います。

そして如何に技術レベルが高かろうがスタートアップ企業ににその手の仕事はできない。それはその通りだと思います。

が。

それとコレとは話が別で、如何に素晴らしい大規模システムが出来上がろうが、人を踏み潰しながら作ったような代物には価値がないと思います。

自分もその手の開発に関わった経験がありますし、出来上がったものはきっと今も世の中を支えていることでしょう。しかし大したことない単金で買い叩かれていた人はたくさんいました。加えて、何人かは心や体を壊したりもしていました。幸いにして死んでしまった人の話は聞かなかったですが。

そんなものに何の価値があるというのでしょうかねぇ。

本当に必要なものなら適正な価格とスキームで作ればいい。人を買い叩いて、心や体をすり減らしながらじゃないと作れない代物なら作らなくていい。

辞められる人から辞めていこう

SI業界がこの先どうなるのか、Web系の未来は明るいのか、事業会社でのエンジニア直接雇用・内製化が進んでいく流れなのか、エンジニアとしてのキャリアはどうか、スキルアップしていける会社なのか、みたいなことは自分で考えて判断すればいい話なのでどうでも良いです。

人身売買で飯を食うのは辞めましょう。売るのも買うのも、そして当然売られるのもです。それだけです。幸いなことに昨今SI界隈でなくてもエンジニアは常に求められている状況です。ちゃんと勉強してスキルを上げれば少なくとも悪いことしなくてもそれなりのお給料で仕事はあります。

辞める力がある人からどんどん辞めていくべきです。辞められない人ばっかり残っていけばそのうち勝手に破綻していくんじゃないかと思っています。このビジネスモデル。

こんなことを言いつつ自分もそんな中で長いこと仕事をしてしまったわけなので、反省ですな。ここに書いたということで一つのけじめとします。自分の中で勝手に(笑)

とはいえ、転職でもフリーになるでも起業するでも環境を変えようとするとそれなりにパワーがかかりますし失敗することもありますからね。なかなか難しいという人もいるでしょうし、せめて新たに入ってこようとしてしまう人がいたらなんとなく止めてあげるのが優しさかな、という程度に思っておけば良いかと思います。

おわりに

現職に何年勤めることになるのかはわかりませんが、今のところ大きな不満もなく家も近いのでそれなりに長くお世話になる・・・のではないかと思っております。冒頭でも触れましたが謎のポジティブさがちょっと気持ち悪い会社だな~とは思ってはいましたが、その気持ち悪さも想定の範囲内というか、毎日の仕事は割と普通でした。

ま、同じ会社に居続けることにこだわりを持つ必要は無い、というのは基本的な話ですよね。前向きにも後ろ向きにも我慢する必要はありません、ということで気楽にやっていきたいなと思います。1回転職するとハードルが下がるというのもありますが。そもそも定年まで働きつづける人では無いので、ゴールできればそれで良し、できなければ別の仕事を探します。

仕事を変えるのはチャレンジであっても構わないけれど、会社を変えるとか働き方を変える、みたいなのがチャレンジっぽくなってしまうのはあまり好ましい世の中とは思えませんしね。

・・・でも家の近さに勝る魅力は無いかぁ・・・。

さて、読み返してみると普通というか当たり前というか・・・何かありきたりな記事になってしまいましたね。ま、この記事を目にした方の中にも今更?とか何を当たり前なことを?と思わない人が少しくらいはいるんじゃないかと期待しておくことにいたしましょう。

この記事に対するコメント

  1. Jia より:

    人身売買のビジネスから早く脱却したいですね。
    技術の進化によって、そんなにたくさん人がいらなくなると思うので、このビジネスモデルはいつか破壊されるはず。

    • 川上徹 川上徹 より:

      Jia さん
      コメントありがとうございます。
      是非ともバッチリ技術進化させちゃってください!

  2. leonee より:

    就活でSI業界も見ていた者です。
    ブログを読ませてもらい、噂には聞いていたものの目をあまり向けていなかったところで考えさせられました。
    とあるSI企業の社員座談会で、ある学生が「この業界は何重にも請負構造になっていると聞いているのですが、例えば○○のプロジェクトの場合どのくらいなのでしょうか。」という質問をしていました。問いに対して、受け答えを担当していた社員を遮り、おもむろに後ろに控えていた部長らしき方が「我々は一次請けでお客さんとパートナー会社さんのことは把握しているが、その下以降はあずかり知らぬところです」というコメントをされました。至って普通の回答だと思うのですが、その時なぜかぞわっとしたのをブログを読んで思い出しました。。

    • 川上徹 川上徹 より:

      leonee さん
      コメントありがとうございます。

      さらに下請けに出して良いかなどは契約上規定することもありますが、制限がない場合は会社としてあずかり知らぬということもさることながら現場レベルでも本当の所属会社を知らずに一緒に仕事をすることも多々ありましたね。

      馴染める馴染めないの話かもしれませんが基本的にはそのようなビジネスモデルの業界なのだと思います。